雑記もろもろ。

オタク的所感の備忘録

フィル・マクスウェルさん

なのはDetonationという物語の悪の枢軸的ポジションの彼ですが、思うに彼は「最後に笑っていればいい」という揺らぎなき信念の為に
その時々で最善と思えることを、最善がダメになった時に次善の策をとれるようなんか色々仕込んでるだけの、どちらかというと善属性の確信犯だと思うんです。
これが悪属性になるとからくりサーカスの白金さん的になってくるのだけど。

そしてそこには「彼にとっての」嘘はなく、その時々に応じて自分が笑えるよう、言い換えると自分を守れるよう自己の認識を変えて全てを真実にしてしまってるんじゃないかな、と。
彼がいい方向と悪い方向どちらに転ぶかは本人の自発的意志ではなく、周囲の扱いが変えてゆくと思ってて、それが最悪の形で転んだのが惑星再生計画頓挫、という結末。



具体的に言及してくと、彼にとって惑星再生計画とテラフォーミングユニットを流用した戦闘機人計画は、
卵と鶏なんかじゃなくまず前者ありきで、もしそれがダメになった場合の予防線としてその技術を応用した軍事利用も出来るような開発をしてるだけだと思うんですね。
少なくとも研究所での彼の暮らしぶりを見ている分には。
そうじゃなければ軍事利用のキーたるイリスがあんなにも幸せに所長や所員達との生活を送れるわけがないし、ユーリが来てからの目覚ましい成果もなかったはず。
別に騙して利用したかった、などではなく、そこには彼が笑って過ごせるような確かな絆があったんじゃないでしょうか。

アミタが最後に考えてた「もし惑星再生計画が頓挫しなければ、再生を諦めなければ彼はあのままだったのか」、パンフ的にはにごしてるけど自分はあのままだったと思います。
彼が裏で軍事利用の為の研究を進めてたのは上が惑星再生に乗り気ではなく、ユーリという確かな可能性がいるにも関わらずどんどん予算規模を縮小している、
という事実があったからで、これは彼にとって惑星再生を志す仲間への嘘や裏切りなどではなく、いつかこの環境がなくなってしまった時に笑えなくならないように別に笑える可能性を模索してただけじゃなかろうか。
そこに今の幸せな絆がなくなってしまう悲しみがない筈はなくて、計画廃止を告げられた後の「最後に笑ってればいいのさ」には不穏さの中にも一抹の寂寥感が確かにありました。さすがは山寺さん。


そんな彼が暴走するトリガーとなった計画廃止と査問、没収というこれでもかってレベルのバッドエンド。
ただ、その後の暴走の苛烈さは彼に対する仕打ちの鏡写し、reflectionなのじゃないかな、とも考えてます。これだけの事を特に罪のない所長に対してやったんだよ、という。
その矛先がなぜ上ではなく罪のない所員達に向くのか 、ってところは、上に対するあてつけもあるだろうけどこれまでの絆への訣別の意味も込められていたんじゃないかと。
次に自分が笑えるよう、これまでの絆に未練などなくこの結末(軍事団体に買われる)は自分の望んでいたものだった、と言えるよう自分の考え方をアジャストして、あるいは笑顔の仮面を被って。
人間たとえ顔だけでも笑っていればいつか感情はついてくるもんです。


その後ぶっ殺されてからは知っての通り、彼が笑える結末の為に徹底的な悪として君臨したりお前を娘にするんだよ!になるわけですが、そうなったのは決して彼自身の強い自発的意志ではなく、
これまでのなのはシリーズのキャラ達のように環境に追い込まれてしまった哀しい悪役、といった性格のキャラなんじゃないか、ってのが最終的に落ち着いた印象でした(スカさんは別)。
個人的には、所員を皆殺しにしたという重い罪があるから昔と同じように暮らす、といった事は無理だとしても、いつかイリスが「私にとってあなたとの絆は真実だった」と言うような、
ちょうどキリエがイリスにそうしたようなある種の赦しがあればいいな、とは思ってます。